株式会社新電気様 / 案件キャッチアップ資料 ver.2

県住 消防・電気設備等保守点検業務
― 業務理解と論点整理

お預かりした資料10点に加え、2026年8月31日に埼玉県電業協会で実施した田熊様のレクチャーの内容を反映しました。前版で「最重要の確認事項」としていた論点は、ほぼすべて解けています。要所は触って動かせるデモにしてあります。

更新 2026年8月31日 株式会社ピースフラットシステム 資料10点+現地レクチャー デモ7点つき

00この資料について/更新履歴

初版(8月30日)は資料10点だけを読んで作成したものでした。8月31日のレクチャーを受けて、推測で書いていた部分が事実に置き換わり、いくつかの前提が変わりました。変わった点を先にまとめます。

論点初版(8/30・推測)今版(8/31・確認済み)
新電気様の立場 点検業者なのか、チェックする側なのか判断できず。最重要の確認事項としていた 解決 両方。点検業者であると同時に、協会のチェック業務を田熊様から引き継ぐ協力会社。立原様が現在レクチャーを受けている段階
報告書の作られ方 手書きが多く、OCRの難易度は低くないと想定 前提が変わった 点検業者は点検業務ソフト(新電気様は「点検リード」、他社は「消防くん」等)で作成。元データは電子で存在する
資料06 チェック表 協会の公式な作業台帳と想定 田熊様が個人で作られた「あんちょこ」。公式様式ではなく、頭の中の手順をExcelにしたもの
案件の本質 紙の検品作業の効率化 再定義 田熊様の頭の中にある判断ルールを、引き継げる形にすること
担当範囲 岩槻・大宮の2支所か4支所か不明 解決 田熊様の担当は岩槻・大宮の2支所。まず岩槻から着手
点検者の資格 資料09の記載から、特定の点検者2名について有効期限を経過している可能性を指摘した 格下げ レクチャーでは田熊様が資格確認を毎回実施されており、当該点検者について問題なしとの見立てが示されました。書面上の照合結果と実務の判断が食い違うため、断定を取り下げ、確認事項F-4)に移しています
この資料の使い方

通勤中にスマホで読める前提で作っています。青いヘッダーの箱は実際に触れます。指で動かすと業務のしくみが分かるようにしてあります。推測を含む箇所は「仮説」と明記しました。

018/31レクチャーで判明した5つのこと

この案件を理解するうえで決定的だった5点です。ここだけ読めば、次の打ち合わせには入れます。

① これは「引き継ぎ」の案件です

田熊様が2支所分(岩槻70住宅・大宮61住宅)をほぼ一人で担ってきた業務を、新電気様が引き継ぎます。作業場所はご自宅(宮原)。「私はこれ全部一人でやってたんですから」という言葉どおりの体制です。

② 難しさは紙ではなく「判断」にあります

手順書に書けるところは書いてあります。問題は書類に表れない判断です。どこを見て何を根拠に良否を決めるか、マニュアルと報告書のどちらが正しいか。ここが田熊様の中にしかありません。

③ 元データは電子で存在します

点検業者は点検業務ソフトで報告書を作っています。新電気様は「点検リード」、他社では「消防くん」など。基本情報を1回入れれば全帳票に連動する仕組みです。紙をOCRする以外の道があるということです。

④ 消火器がいちばん難しい

「消火器のルールが結構面倒くさくて、そこが分かるとだいぶ意味が分かる」。製造年・放射試験・詰替え・取替範囲が絡み、田熊様ご自身も「そこがややこしい、よくわからない」とおっしゃった領域です。多い住宅では800本近くあります。

⑤ マニュアル(マスタ)が間違っていることがあります

「逆に業務マニュアルの方が間違ってる時がある」。面積表の行が1行ずれていて、3階建てなのに10階建てになっていた、という実例がありました(3年ほど前)。どちらが正しいかは、その場では分からない――「どっちが正解かもんでわかんないんですよ」。マスタを疑う視点が要る、ということです。

この案件の目的を、一文にすると

「田熊様の頭の中にある判断ルールを、コンピューターが判定できる形に書き出し、誰でも同じ品質でチェックできるようにする」。片川の言葉では「そのルールを決めてあげて、コンピューターで判定できるようにしてあげたい」、田熊様の言葉では「私が毎日通うかってなっちゃう」。同じことを指しています。

023分サマリー

業務全体の骨格を4点で押さえます。

① 何の業務か

埼玉県住宅供給公社が管理する県営住宅272住宅の消防設備を、消防法第17条の3の3に基づいて年2回点検します。点検は13社以上の点検業者が分担して実施し、報告書を協会へ提出します。

② チェック業務とは

提出された報告書が、法令とマニュアルどおりに作られているかを一枚ずつ突き合わせて検査し、不備があれば訂正依頼書を出す業務です。今回いただいた資料の多くは、この検査側の資料でした。

③ 何を突き合わせているか

マニュアル(=正解データ)の数量/各点検票に書かれた実数/住宅別一覧表の合計欄。この3つが一致するかを、号棟ごと・設備ごとに人が数えて確認します。加えて宛先・氏名・日付・資格・面積・部数・綴り順も見ます。

④ 不備の中身

訂正依頼書5年分から151件を抽出しました。大半が「未記入」「数量不一致」「未提出」という、判断ではなく照合で見つかる種類です。訂正依頼は業者ごとにまとめて1枚で出し、期限は概ね1週間です。

03登場人物と座組

前版で最大の不明点だった座組が確定しました。新電気様は2つの役割を同時に持ちます

発注者
埼玉県住宅供給公社
本社(公営住宅技術課)+ 大宮・川越・熊谷・岩槻の4支所
各支所に監督員が1名ずつ
↓ ①保守点検業務を発注
受託者A
点検業者(13社以上)
立花ディフェンス/藤岡防災設備/那須電機工業/三進電気/ミヌマ防災/中央防災設備/高山電設工業/積田電業社/旭電気工業/サイボウ/丸電/万代電気工業/大広電気/太光電機/中村電機 ほか
株式会社新電気もこの一社
-
-
-
-
↓ ②補助業務(マニュアル作成・報告書チェック)を発注
受託者B
一般社団法人 埼玉県電業協会
さいたま市南区鹿手袋4-1-7/TEL 048-864-0385
マニュアルの作成・説明会の開催・報告書の検査・不備一覧表の作成
↓ ③チェック業務を実務担当
実務担当
田熊 様
岩槻支所・大宮支所の2支所を担当
ご自宅(宮原)で作業/ほぼ一人で実施
↓ 引き継ぎ・協力
今回の主役
株式会社新電気(立原 様)
埼玉県三郷市早稲田4-7-9/代表取締役 西藤 輝
顔① 点検業者として、自社で点検し報告書を提出する側(例:岩-47 越谷蒲生)
顔② 協会の協力会社として、田熊様からチェック業務を引き継ぐ側
座組についての発言「新電気さん、一応協力会社みたいな感じなので」
「これから直接(田熊様の作業が)終わって、処理をこっちに持ってくる」
引き継ぎの難しさについて「書類には表れないけど、どう拾い上げるかとか、どういう条件下にするのか。条件ルールはあるとは思うんだけど、どれを見れば判断できるとか、この辺がたぶん田熊さんにしかわからない」
資料08「訂正依頼書」の宛先が新電気様だった理由も判明しました

訂正依頼書は点検業者ごとに1枚にまとめて発行されます(「何回も出せないから」)。お預かりした5シートは、新電気様が点検業者として受け取った過去3年分でした。レクチャーでは同じ様式で「太光電機の金田様宛」に出す例が示されています。
つまり新電気様は今、訂正依頼を受け取る側から、出す側へ回ろうとしている、という構図です。

04年間スケジュール

令和8年度のスケジュールです。点検の山が年2回、そのたびにチェックの山が来ます。

R8.6.1(月)
〜8.25(火)
第1回 点検実施期間(機器点検)
避雷針設備・共用分電盤の絶縁抵抗測定も、この期間内に年1回分を実施・完了させます。
R8.8.31(月)
第1回 報告書 提出期限(必着) ← 本日
提出先:一般社団法人 埼玉県電業協会 事務局。ダンボール箱2箱に一式同封して発送するのが通例です。
R8.9月
チェック作業の集中期間(=引き継ぎの実地訓練期間)
枚数確認 → マニュアルとの数量突合 → 付箋出し → 訂正依頼書の作成・送付(期限は概ね1週間後)→ 差し替え → 綴り直し・梱包・発送。過去の訂正依頼書は9月8日発行/9月15日期限などです。
R8.9.30
補助業務の履行期限(資料01・仕様書の履行期間の終期)
R8.12.1(火)
〜R9.2.22(月)
第2回 点検実施期間(機器点検+総合点検)
連結送水管の配管耐圧試験は5年に1回。実施した年だけ総合点検欄に記入が入ります。
R9.2.26(金)
第2回 報告書 提出期限(必着)
その後3月にかけて第2回分のチェック作業。訂正依頼書も3月12日・13日期限の実例があります。
3年に1回
消防署への報告
一般防火対象物のため報告は3年に1回。公社が管轄消防署へ提出します。「もうそろそろだね」との発言あり。

053つの点検業務

一つの業務名の下に、性質の違う3業務が入っています。難易度はまったく違います。

業務難易度対象・実施者チェックの内容
消防用設備等
主業務・年2回
272住宅の消防用設備全般。点検業者13社以上が分担 宛先・届出者・住所・面積・防火管理者・立会者・点検者資格・点検日・各設備の数量と良否・合計欄・不良箇所・写真・部数・綴り順。本資料のほとんどはこの業務の話です
共用分電盤の
絶縁抵抗測定

年1回
「外灯・階段・廊下灯」の100V回路分電盤。3階以上の棟すべて 測定値が0.1MΩ以上か(0.1はOK、0.1未満はNG)。測定者・立会者・日付・箇所数。TV用ブースター等の弱電回路は対象外。「難しくないので、割と突き合わせはしやすい」
避雷針設備
年1回
高さで設置義務が決まるため対象は限定的。電気工事業者が実施(中村電機・大久保電機など) 突針部・導線部・布線部・端子盤部・接地極部の良否。突針の本数と接地極数。総合接地抵抗10Ω以下(単体で超えることがあり、その場合は注記)。配置図の添付漏れが多い
絶縁抵抗の一覧表には「番号がずれる」落とし穴があります

設置数ベースの通し番号と、実際に点検した住宅の通し番号が別に振られています。点検しない団地があるため途中で番号が飛び、同じ番号だと思って照合すると別の住宅を見てしまうことになります。「これも表示で違っちゃうからね」と注意されていた箇所です。システム化する際は、住宅を番号ではなくIDで一意に紐づける必要があります。

06提出書類の構造

1住宅あたりの提出物が階層構造になっており、それが272住宅分×3部あります。

📂デモ① 1住宅分の提出物をひらいてみるタップで開閉します

提出チェック表(協会独自様式)の位置づけ

これは「必要な書類を作りました・揃えました」というだけのチェックで、中身の検査ではありません。「これはもう、これで3部作りましたよっていうのが来ていて、中身の詳細まで見た上でのチェックじゃない」。中身の検査は次の工程です。

「マニュアル」という言葉の使い分け

冊子としてのマニュアル(資料04・136ページ)と、実務上の「マニュアルの数量」=別紙1-1 消防設備等一覧表に書かれた設備の個数の2つの意味で使われます。後者が突合の起点=正解データです。「マニュアルとかもう正解が全部書いてあるみたいな感じ」。

07チェック作業の全体フロー

資料02に書かれた7ステップです。9月のひと月をどう使うかの見取り図にあたります。

👣デモ② 1シーズンの7ステップ番号をタップ/次へで進みます
1 / 7

081住宅を頭から最後までチェックする

レクチャーで実演された、1住宅分をどの順に何を見るかの手順です(例:岩-32 県営草加花栗住宅/点検業者 太光電機)。ここが引き継ぎの中身そのものです。

🔬デモ③ 実演された14手順をたどる番号をタップ/次へで進みます
1 / 14
この14手順のうち、手順書に書かれているのは半分以下です

「消防署長の名前が去年のまま」「面積表の行がずれている」「他社の報告書は同じ日付が多いのに、この1件だけ日付が違う」――こうした見るべき勘所は、資料02・03には書かれていません。田熊様が2年かけて身につけたものです。これを書き出すことが、この案件の実質的な成果物になります。

09数量突合を体験する

14手順の核心は、同じ設備の個数が複数の書類に書かれていて、それが一致するかを数えることです。実際に動かしてみてください。

🔍デモ④ 3つの数字を突き合わせる+ − で数字を動かすと、判定が変わります
0 件の不備を検出 / 8件中
ここに人の判断が残ります

数字が合わないとき、直すべきは報告書側かマニュアル側かを決めなければなりません。「どっちも合ってるよ、どっちも言い分があるよ、という場合は協議みたいな感じになる」。マニュアル側が間違っている実例(面積表の行ずれ)も確認されています。

※ 各行の数値と訂正文は、資料08「訂正依頼書」に実際に記録された事例をもとにしています。

10消火器がいちばん難しい

レクチャーで「一番めんどくさい」と名指しされた領域です。ここを言語化できるかが、この案件の成否を分けます。

田熊様「消火器がね、消火器のルールが結構面倒くさくて、そこが分かると、だいぶこの数量がこっちに上がってくる意味が分かるかな」
田熊様「そこがややこしい。よくわかんない。……そのルールを立原さんとよく(詰めて)」

絡み合っている要素

要素レクチャーで語られた内容確定度
製造年マニュアルに製造年が記載されている。経過年数で必要な点検の種類が変わる確定
外観点検/機能点検年2回の点検で外観点検は必ず実施。機能点検は経過年数の条件を満たしたものだけ確定
放射試験「製造から5年経つと放射試験」「5年経ってなければやらない」。実施は抜き取りで、何割を対象にするかの計算式がある要確認
放射後の扱い放射したものは詰め替える。ただし「今はもう本体そっくり交換している」要確認
詰替え/本体交換「6年以降でまた、そのままで充填になったら全部切り替える」。詰替え時は薬剤の割合の話も出ていた未確定
取替範囲マニュアル上「本体のみ/ブラケット含む/BOX除く」の3区分。設置状況(据置・BOX・ブラケット)と一致しているかを見る確定
物量「場所によっては800本近くあります」。岩槻管内だけで蓄圧式2,918本・加圧式45本確定
🧯デモ⑤ 消火器の判定ルールを組み立ててみる製造年を動かすと判定が変わります
あえて「仮」のまま置いてあります

ここに入れている経過年数の閾値は暫定値です。実務で使っている正確なルール(放射試験の抜き取り率、詰替えと本体交換の分岐、加圧式と蓄圧式の違い)は、田熊様と立原様の間で確定させる必要があります。この画面の空欄を埋めていく作業そのものが、引き継ぎの実体です。

11現場の制約と、書かれていない判断

体制・場所・慣行の制約と、手順書に載っていない判断の例です。

体制

  • 1支所につき担当1名。4支所で4人体制
  • 田熊様は岩槻・大宮の2支所を担当。作業はご自宅(宮原)
  • 電業協会の事務所内の作業場は「二人でいっぱいになる」広さ、平日9〜17時のみ
  • 「これ全部一人でやってた」「80番、自分で作ってた」

道具

  • 資料06のチェック表は田熊様の自作。「私が作ったもんだから、人に見せるものでもない」「あんちょこなんですよ」
  • マニュアルの数字を書き写し、線を引いて「上から下から横から見なくていい」ようにしてある
  • 不備箇所には物理的に付箋を貼る
  • 訂正依頼書はExcel。田熊様が数値がリンクするよう書式を作り直された

書かれていない判断の例

  • 消防署長・所長の氏名が前年のままになっていないか(人事異動で変わる)
  • 他社の報告書は同じ日付が多いのに、1件だけ違う日付 → 誤記の疑い
  • 資格の類別と点検した設備の対応(消火器の点検には乙6が要る。「4類はあるけど6類がないのに名前を書いちゃってる人がいる」)
  • 個数欄が空欄のときは、設備が存在すること自体を写真等で確認する
  • 不良がある設備は、総括表・別紙6・別紙7・写真の4か所すべてに反映されているか

個別の例外

  • 岩槻諏訪山下は工区分けされているが、集会所ごとに報告書を作成(消防署の指示)
  • 消防設備と避雷針・絶縁抵抗を別々に提出する業者がいる。1部しか出さない業者もいる
  • 複数棟ある団地は、消防署と公社の合意で1つの総括表にまとめてよいことになっている
  • 大宮支所は10階建てなど大きい建物が多く、岩槻より難度が高い。「岩槻は初心者用みたいな感じ」

12不備151件の分析

資料08「訂正依頼書」(令和5〜7年度・岩槻管内5回分)から抽出した不備の実データです。何を自動化すれば効くのかを判断する材料になります。

未記入・記入漏れ
最多
数量の不一致
書類の未提出
日付の誤り・不整合
氏名・宛名の誤り
添付間違い・綴り順
様式・呼称の誤り
資格要件の疑義
🗂デモ⑥ 実際の不備記述を、類型で絞り込むチップをタップして切り替えます
分析から言えること

圧倒的多数は「あるべき値と実際の値の照合」で機械的に発見できる種類です。正解データ(設備一覧・住所録・面積表・様式の版・資格台帳)を持っていれば判定できます。

人の判断が残るのは「不一致の原因が報告書側かマニュアル側か」「他社と日付の傾向が違う」「判定が逆では」といった文脈を踏まえた妥当性の判断です。ここは自動化せず、候補を提示して人が確定させる設計が向きます。

13数字で見る規模

この業務が扱う物量です。

0住宅
点検対象の県営住宅
大宮61/川越65/熊谷76/岩槻70
0住宅
田熊様の担当範囲
岩槻70+大宮61。これをほぼ一人で
0
報告書の提出部数
正・副・控。住宅別一覧も3部
0
点検業者の数
確認できただけで13社以上

岩槻支所(1支所分)の内訳

0住宅
点検対象
全97住宅のうち借上げ27を除く
0
対象棟数
1住宅あたり平均2.9棟
0
対象戸数
住戸内の点検も含む
0
感知器(差動+定温)
差動5,986+定温2,529。煙は別途126
0
消火器(蓄圧式)
加圧式45本を別途計上
0
住戸用自動火災報知設備
戸外表示器も同数
0
非常警報 発信機
ベル1,199/表示灯1,130
0
避難ハッチ
はしご90/スベリ台2
照合対象の数字の量

上記は岩槻支所1つ分です。この設備数量が、①マニュアルの一覧表、②田熊様のチェック表、③各点検票、④住宅別一覧表の合計欄、の4か所に現れ、一致するかを人が確認します。大宮支所を含めると倍になります。

14システム化の勘所

レクチャーを受けて、初版から方針を大きく変えました。もっとも重要な変更は、入力方式です。

方針転換:OCRを主役から降ろす

初版では「紙をOCRで読むか、業者に入力してもらうか」を最大の分岐点としていました。しかし実際には、点検業者はすでに点検業務ソフトで報告書を作成しています(新電気様は「点検リード」、他社は「消防くん」等)。基本情報を1回入力すれば全帳票に連動する仕組みで、「みんな大体そういうソフトを使っているはず」とのことです。

つまり元データは電子で存在します。紙のPDFを苦労して読み取るより、ソフトのエクスポート機能や、ソフトメーカーとのデータ連携を先に当たるべきです。「メーカーさんに聞いて、どういうのを作って引っ張り上げるかっていう話は行った方がいい」という助言もいただいています。

3段階で進める

第1段階 正解データの一元化

設備数量の「正解」は現在、マニュアルの紙(別紙1-1)と田熊様のExcelに二重管理されています。ここを一つのデータベースにまとめれば、突合の起点が固定され、あんちょこを作る作業自体が不要になります。

住宅/号棟/設備種別/数量/製造年/湿式乾式/耐圧試験実施年を持つマスタ。マニュアル側が間違っている場合の訂正フローも設計に含めます。公社に電子の原本がある可能性があるため、まず確認します。

第2段階 判断ルールの言語化

ここが本命です。田熊様の頭の中にある判断を、条件式として書き出します。数量照合のような明快なものから、消火器の経過年数ルール、資格の類別と設備の対応、日付の妥当性まで。

全部を一度に書き出すのは無理なので、実際のチェック作業に立ち会いながら、出てきた判断をその場でルールとして登録していく進め方を推奨します。「やってみて、抜けてるところをどんどん修正して直していきたい」という方針と合致します。

第3段階 照合と訂正依頼の自動化

ルールが揃えば、点検ソフトから取り込んだ報告書データとマスタを自動照合し、不備を一覧化できます。検出した不備から業者ごとに1枚の訂正依頼書を自動生成し、送付日・期限・処理完了日を追跡します。

「訂正依頼が遅れるとその後の差し替え作業等が遅れる」とおり、期限管理そのものがボトルネックです。

先に当たるべきこと

項目内容優先
点検ソフトのデータ形式「点検リード」「消防くん」等のエクスポート形式・API・CSV出力の有無をメーカーに確認。ここが取れるかどうかで、以降の設計難易度が一桁変わります最優先
マスタ原本の所在マニュアルP35に「データ提供:埼玉県住宅供給公社」の記載。公社に電子の原本がある可能性。Excelで受け取れれば初期コストが大きく下がります最優先
不足資料の入手避雷針設備の一覧表、絶縁抵抗結果一覧表、機器一覧表、業務写真のサンプル。紙ではいただきましたが電子データが未着です(真橋様経由で確認予定)
消火器ルールの確定放射試験の抜き取り率、詰替えと本体交換の分岐、加圧式・蓄圧式の違い。セクション10のデモ⑤の空欄を埋める作業
紙の提出という制約消防署・公社への提出は消防法様式の紙が正本です。当面はチェック工程だけを電子化し、最終成果物は紙のままが現実的です前提

15確認事項(更新)

初版の18項目のうち7項目が解決しました。残った項目と、レクチャーで新たに生じた項目を整理します。

解決A. 座組と役割 ― 8/31レクチャーで判明
A-1新電気様の立場 → 点検業者 兼 協会の協力会社

点検業者として報告書を提出する側であり、同時に田熊様からチェック業務を引き継ぐ側。立原様が実地で引き継ぎ中です。

A-2訂正依頼書の宛先が新電気様だった理由 → 点検業者として受け取った分

訂正依頼書は業者ごとに1枚にまとめて発行されます。お預かりしたのは新電気様が受け取った過去3年分でした。

A-3田熊様の役割 → 協会側のチェック業務 実務担当(岩槻・大宮)

ご自宅(宮原)で作業。資料02・03・06はすべて田熊様の作成物です。

B-3対象範囲 → まず岩槻、次に大宮

田熊様の担当は2支所。「岩槻は小さい建物が多いので初心者用、大宮は10階建てなど大きい建物が多い」。

C-2資料06チェック表の作成者 → 田熊様の自作「あんちょこ」

公式様式ではありません。マスタ設計の出発点は資料05(別紙1-1)であり、06はその使い方の記録として読むべきものです。

C-4報告書の作られ方 → 点検業務ソフトで作成

手書き前提という初版の想定は誤りでした。設計方針を変更しています(セクション14)。

C-5訂正依頼の送付 → 協会経由でFAX、業者ごとに1枚

期限は概ね1週間。過去3年分をまとめた例も確認しました。

最優先D. 新たに生じた確認事項
D-1点検業務ソフトから、データをどの形式で取り出せますか。

新電気様の「点検リード」について、CSV・Excel・API等のエクスポート機能の有無をメーカーに確認したいです。「うちが使ってるやつは外には出せない」というのは社外秘という意味と理解していますが、メーカーと直接お話しする許可をいただけますか。他社が使う「消防くん」等も同様に当たります。
ここが取れると、OCRを介さずに突合できるため、実現難易度と精度が大きく変わります。

D-2消火器の判定ルールを、条件式として確定させたいです。

放射試験の抜き取り率の計算式、詰替えと本体交換の分岐、加圧式と蓄圧式で条件が違うか。デモ⑤の空欄部分です。田熊様と立原様に同席いただき、実例を見ながら詰めるのが早いと考えています。

D-3不足している電子データをいただけますか。

①避雷針設備の一覧表、②絶縁抵抗結果一覧表、③機器一覧表、④業務写真のサンプル。紙ではいただきましたが電子データが未着です。真橋様経由で送られている可能性があるとのことでしたので、こちらでも再確認します。

D-4田熊様への継続的なヒアリングの進め方を決めたいです。

宮原周辺で打ち合わせ場所を確保する案が出ていました。9月のチェック作業に何度か同席させていただき、その場で出た判断をルールとして書き留めていくのが、もっとも確実で早いと考えます。頻度・場所・謝礼の要否をご相談させてください。

E. 業務範囲と契約
E-1第2回点検分のチェック業務は、誰が行っていますか。

仕様書は補助業務を「第1回目点検結果報告書」に限定し、履行期間も9月30日までとしています。しかし資料08には第2回分(3月期限)の訂正依頼書が実在します。別契約か慣行かを確認したいです。

E-2新電気様は、この業務をどこまで引き継ぐご予定ですか。

岩槻・大宮の2支所すべてか、まず岩槻だけか。また、田熊様の関与はいつまでを想定されていますか。システムに求める完成度と時期が、ここで決まります。

E-3緊急修繕への対応も業務範囲に含まれますか。

マニュアルP33に、点検業者は担当住宅の緊急修繕対応を行い、同一公社所管の他工区業者とバックアップネットワークを構築する義務がある旨の記載があります。別の業務フローであり、課題があればスコープに含める検討ができます。

F. 現状業務の実態
F-1チェック作業は、実際に年間何人日かかっていますか。

1住宅あたりの所要時間、1日の処理住宅数が分かると効果の試算ができます。今回の実演では1住宅(2棟規模)でおよそ40分でした。これを131住宅分と考えると規模感が見えます。

F-2マニュアル(別紙1-1)の元データは電子形式で存在しますか。

マニュアルP35に「データ提供:埼玉県住宅供給公社」の記載があります。公社側に原本がある可能性が高く、Excel等で受け取れるならシステム化の初期コストが大きく下がります。

F-3絶縁抵抗一覧表の「番号ずれ」は、どう管理されていますか。

設置数ベースの番号と点検対象ベースの番号が別で、途中で飛びます。現状は目視で吸収されていますが、住宅を一意に識別するキーを決めないとシステム化できません。

F-4点検者の資格は、どの台帳を正として確認していますか。

初版では、資料09(令和7年度報告書)の記載をマニュアルP16の要件と照合し、特定の点検者2名について有効期限を経過している可能性を指摘しました。しかしレクチャーでは、田熊様が報告書を見るたびに資格の類別と有効期限を確認されており、当該点検者について問題なしとの見立てが示されています。
断定は取り下げますが、①資料09の記載が最新かどうか、②更新後の情報をどこで管理しているか、は確認させてください。過去の訂正依頼書に「細谷氏第1種の有効期限がR5.3.31です」「長嶋諒氏乙種6類受講年月R1.11と記入、確認願います」という実際の指摘が残っており、チェック項目としては確かに存在するためです。ルールが明確なので自動判定に向く領域でもあります(下のデモ⑦)。

🪪デモ⑦ 資格の有効期限を機械的に判定してみる受講年月を変えると判定が変わります

判定ルール:マニュアルP16「講習を受けた日以後における最初の4月1日から5年以内」。R8年度 第1回点検の開始日(2026年6月1日)時点で有効かを計算しています。 プリセットは実在の人物の資格状況ではなく、ルールの動きを示すための入力例です。

G. 将来の広がり
G-1公社・電業協会への展開の可能性はありますか。

チェック業務の効率化は、性質上協会や公社を巻き込んだほうが効果が大きくなります。新電気様の社内ツールとして作るのか、将来的に協会・公社へ広げる構想があるのかで、設計思想が変わります。

G-2他の点検業者への横展開はどうお考えですか。

13社以上が同じ様式で報告書を作成しています。報告書作成支援としては横展開の余地がありますが、競合支援になる面もあるためご意向を確認させてください。

G-3県営住宅以外にも同種の業務はありますか。

「うまく乗ればいろんな他の施設でも」という発言がありました。市営住宅・UR・民間マンション等でも同種の点検業務があるなら、共通の仕組みとして設計することで投資対効果が上がります。

次のアクション(提案)

1. 立原様が実際に岩槻分のチェックを進める。詰まった箇所・判断に迷った箇所をそのまま記録していただく(それがルールの原案になります)

2. 点検リードのメーカーに、データ出力について問い合わせる(D-1)

3. 不足している電子データ4点を入手する(D-3)

4. 9月中に田熊様のチェック作業へ同席し、消火器ルールを中心に判断を書き出す(D-2・D-4)

5. 上記を踏まえてマスタ設計とルール定義の初版を作り、岩槻1支所分で試す