県住 消防・電気設備等保守点検業務
― 業務理解と論点整理
埼玉県住宅供給公社が発注する県営住宅272住宅の消防設備点検、およびその報告書チェック業務について、お預かりした資料10点を読み解いて構造化したものです。要所は実際に触って動かせるデモにしてあります。
00この資料について
お預かりした「県住消防点検資料」フォルダ内の10ファイルを全ページ読み込み、業務の全体像・書類の構造・実際に起きている不備の傾向を整理しました。あわせて、資料だけでは判断できなかった点を「確認事項」として最終セクションにまとめています。
読み込んだ資料
PDF 7点(うちスキャン画像 6点・計173ページ)、Excel 3点(計12シート)。すべて内容を確認済みです。
この資料の使い方
通勤中にスマホで読める前提で作っています。青いヘッダーの箱は実際に触れます。指で動かすと業務のしくみが分かるようにしてあります。
注意事項
推測を含む箇所は「仮説」と明記しています。特にセクション11は資料からの推論であり、確定情報ではありません。
令和8年度・第1回点検の報告書提出期限は令和8年8月31日(月)です。本資料の作成日は8月30日(日)で、期限は明日にあたります。そしてチェック業務(不備の洗い出しと訂正依頼)は、報告書が出そろった9月に集中します。この案件で議論すべきタイミングは、まさに今です。
013分サマリー
細部に入る前に、この業務が何であるかを4点で押さえます。
① 何の業務か
埼玉県住宅供給公社が管理する県営住宅272住宅の消防設備を、消防法第17条の3の3に基づいて年2回点検し、消防署へ報告する業務です。点検そのものは複数の点検業者が分担して実施します。
② その周辺にある「チェック業務」
点検業者から上がってきた報告書が、法令とマニュアルどおりに作られているかを一枚ずつ突き合わせて検査し、不備があれば訂正依頼を出す業務が別に存在します。今回いただいた資料の多くは、この検査側の資料です。
③ どこが大変か
チェックは紙・Excel・目視の突合で行われています。マニュアルの数量/チェック表の数量/報告書の数量/住宅別一覧の合計、この4つが一致するかを人が数えて確認する構造です。1支所につき担当1名という体制も判明しています。
④ 不備の中身
訂正依頼書5年分から151件の不備記述を抽出しました。うち大半が「未記入」「数量不一致」「書類の未提出・添付間違い」という、判断ではなく照合で見つかる種類のものです。
これは「消防設備を点検する業務」であると同時に、「大量の紙の報告書を、マニュアルという正解データと突き合わせて検品する業務」です。後者の性質が、この案件の本丸だと考えられます。
02登場人物と座組
この業務には4種類のプレイヤーが登場します。新電気様は資料上、複数の顔で現れるため、まず整理します。
各支所に監督員が1名ずつ配置
株式会社新電気もこの一社
-
業務マニュアルの作成・説明会の開催・報告書の取りまとめと検査・不備一覧表の作成
新電気様が資料上で持つ「2つの顔」
顔① 点検業者として
資料09(令和7年度 点検結果報告書)の点検実施責任者欄が「株式会社新電気」です。所在地・埼玉県三郷市早稲田4-7-9、代表取締役 西藤 輝、TEL 048-958-2611。点検者として立原誠一氏・大橋利春氏の氏名と資格が記載されています。対象は岩槻管内・県営越谷蒲生団地(管理番号 岩-47)。
つまり新電気様は、公社から点検業務を受注し、報告書を提出する側です。
顔② チェックする側として
一方、資料02「チェック作業の流れ」・03「作業上の注意」・07「点検結果一覧(田熊)」は、協会側の検査担当者が使う内部手順書・作業台帳です。資料03には「電業事務所使用について」「消防のチェック作業は1支所一人担当のため4人で作業することになります」という記述があり、協会の事務所を間借りして検査作業を行う外部要員の視点で書かれています。
この2つの顔の関係が、資料だけでは確定できませんでした。確認事項 A-1で扱います。
令和5年〜7年度の訂正依頼書5シートは、いずれも「株式会社新電気 ご担当者 佐々木 様」宛、差出人 埼玉県電業協会・担当 田熊という体裁です。これを素直に読むと「協会 → 点検業者・新電気への不備通知」ですが、記載されている不備は岩槻管内の多数の住宅(複数の点検業者の担当分を含む)にまたがっており、新電気様1社分の通知としては範囲が広すぎます。この点も確認事項 A-2としています。
03年間スケジュール
令和8年度(2026年度)のスケジュールです。点検の山が年2回、そのたびにチェックの山が来ます。
〜8.25(火)
避雷針設備・共用分電盤の絶縁抵抗測定も、この期間内に年1回分を実施・完了させます。
提出先:一般社団法人 埼玉県電業協会 事務局(持参または郵送)。ダンボール箱2箱に一式同封して発送するのが通例です。
報告書の枚数確認 → マニュアルとの数量突合 → 不備の付箋出し → 訂正依頼書の作成・FAX送付(期限は概ね1週間後)→ 差し替え → 綴り直し・梱包・発送。過去の訂正依頼書の日付は9月8日発行/9月15日期限などとなっています。
〜R9.2.22(月)
連結送水管の配管耐圧試験は、原則この総合点検時に実施します。
その後3月にかけて第2回分のチェック作業。訂正依頼書の実例も3月12日・13日期限のものが確認できます。
資料01の仕様書は、補助業務の対象を「第1回目点検結果報告書」の取りまとめと明記し、履行期間も令和8年9月30日までとしています。しかし資料08の訂正依頼書には第2回分(3月期限)のシートが実在します。第2回分のチェックが誰の責任範囲で行われているのか、確認事項 B-1で確認が必要です。
043つの点検業務
「消防・電気設備等保守点検業務」という一つの名前の下に、性質の違う3業務が入っています。頻度・対象・提出書類がそれぞれ異なります。
| 業務 | 頻度 | 対象 | 提出書類(部数) |
|---|---|---|---|
| 消防用設備等 保守点検 主業務 |
年2回 1回目=機器点検 2回目=機器+総合 |
272住宅の消防用設備全般(自動火災報知設備、非常警報設備、消火器、避難器具、誘導灯、防火戸、消火栓設備、連結送水管など) | 点検結果報告書 ×3部/住宅別一覧表 ×3部(別紙3のみ1部)/業務写真 ×1部 |
| 避雷針設備 点検 |
年1回 1回目点検時 (6〜8月) |
避雷針・棟上げ導体を有する住宅。突針部・導線部・布線部・端子盤部・接地極部の5部位を良否判定 | 避雷針設備点検結果報告書 ×3部(別紙5のみ1部)/業務写真 ×1部/棟ごとの配置図の添付が必須 |
| 共用分電盤の 絶縁抵抗測定 |
年1回 1回目点検時 (6〜8月) |
「外灯・階段・廊下灯」の100V回路分電盤。3階以上の棟すべてが対象。TV用ブースター等の弱電機器に接続された回路は対象外 | 絶縁抵抗測定表 ×3部(別紙9-1のみ1部)/業務写真 ×1部(不良箇所のみ) |
基準値 0.1MΩ。ただし実データ(資料07)を見ると、0.2MΩ・0.15MΩ・0.25MΩ といった「基準は満たすが低い」値は備考欄に注記する運用になっています。「0.2MΩ以下表示」という但し書きが繰り返し登場します。
総合接地抵抗10Ω以下が要件。実データでは「単体で10Ω超え」という注記が複数住宅で見られ、単体値と総合値の両方を記録する必要があります。引下導線は地上2.5m以上・地下30cmまで保護されているかも点検項目です。
05提出書類の構造
この業務の複雑さは、ほぼここに集約されています。1住宅あたりの提出物が階層構造になっており、それが272住宅分×3部あります。
「棟別・設備別にまとめ、設備は別記様式の順に並べる」「住宅別一覧は 別紙6 → 別紙2-1〜2-7 → 別紙7 の順」と決まっており、順番の誤りが不備として指摘されます(実例:「綴り順が違う。棟毎に設置設備を綴ります。訂正しました」)。
「マニュアル」という言葉の使い分けに注意
狭義:業務マニュアル(資料04)
全136ページ。記入例・注意事項・様式類集・資料集を含む冊子。協会が毎年作成し、公社の承諾を得たうえで説明会で点検業者に配布します。
実務上:正解データとしての「マニュアル数量」
マニュアル巻末の別紙1-1「消防設備等一覧表」に記載された設備の個数のこと。チェック作業では「マニュアルの数量」=あるべき正解として、報告書の数量と突き合わせます。訂正依頼書に頻出する「マニュアル合計60を50に変更します」は、この一覧表側を直す、という意味です。
06チェック作業の実際
資料02「消防点検報告書等のチェック作業の流れ」に書かれた7ステップです。ここが、システム化を考えるうえで最も重要な記述です。
この業務の核心 ―「数字が合うか」を人が数えている
STEP 3が核心です。ここで行われているのは、同じ設備の個数が4か所(マニュアル/チェック表/点検票/住宅別一覧の合計欄)に書かれていて、それが一致するかを号棟ごと・設備ごとに人が目で数える作業です。実際に動かしてみてください。
数字が合わないとき、直すべきは報告書側かマニュアル側かを決めなければなりません。新築の追加や設備更新でマニュアル(=台帳)が実態から遅れることがあるためです。上のデモで「マニュアル側を直す」と「業者へ訂正依頼」の2種類が出るのは、この判断が実際に発生しているからです。
※ 各行の数値と訂正文は、資料08「訂正依頼書」に実際に記録された事例をもとにしています。
07現場の制約条件
資料03「作業上の注意」から読み取れる、体制・場所・慣行の制約です。システム化を考える際の前提になります。
体制
- チェック作業は1支所につき担当1名。4支所あるため4人体制で作業する
- 電業協会の事務所内の作業場は「二人でいっぱいになる」広さ
- 提出書類を自宅へ搬出して作業することがある
場所・時間
- 電業事務所は平日9時〜17時のみ使用可
- 休日・時間外は職員の手続きが必要で使いづらい
- 差し替え・綴り書類の作成・梱包・発送は電業事務所で行う
連絡手段
- 訂正依頼は電業にメールを送り、電業からFAXを送信してもらう
- 訂正依頼書はExcelで作成し、点検業者へFAX送付
- 不備箇所には物理的に付箋を貼る、チェック表①の該当箇所に×を付ける
個別の例外
- 岩槻諏訪山下住宅は中層・高層・低層に工区分けされているが、集会所ごとに報告書を作成(消防署の指示)
- 消防設備と避雷針・絶縁抵抗を別々に提出する業者がいる。1部のみ提出の業者もいる
- 久喜青葉D棟は新築、上尾シラコバトA棟は新しいため、マニュアルの数量・記入位置に特に注意
- マニュアル訂正は1回目の点検報告書提出までの分が次年度マニュアルに反映される
岩槻支所だけで70住宅・200棟・5,812戸あります。これを担当1名が、9月のひと月で紙を突き合わせて検品する構造です。属人化・繁忙期集中・引き継ぎ困難という三重の課題が、この一文に凝縮されています。
08不備151件の分析
資料08「訂正依頼書」(令和5年度〜令和7年度・岩槻管内5回分)から不備の記述を全件抽出し、性質ごとに分類しました。この案件で何を自動化すれば効くのかを判断する、最も具体的な材料です。
不備の類型と件数感
※ 訂正依頼書は結合セルを多用したExcelのため、1件の不備が複数行にまたがります。件数は「不備記述のある行数」ベースの相対比較としてお読みください。
151件の不備記述のうち、圧倒的多数は「あるべき値と実際の値の照合」で機械的に発見できる種類です。「未記入」「数量不一致」「未提出」「氏名・住所の誤記」「様式が古い」「資格の有効期限切れ」は、いずれも正解データ(マニュアルの設備一覧・住所録・様式の版・資格台帳)を持っていれば判定できます。
逆に、人の判断が残るのは「不一致の原因が報告書側かマニュアル側か」「他社の報告書と日付の傾向が違う」「判定が逆では」といった、文脈を踏まえた妥当性の判断です。ここは自動化の対象ではなく、候補を提示して人が確定させる設計が向きます。
09数字で見る規模
この業務がどれだけの物量を扱っているかを、資料から拾える範囲で数値化しました。
岩槻支所(1支所分)の内訳
上記は岩槻支所1つ分です。この設備数量が、①マニュアルの一覧表、②チェック表、③点検票、④住宅別一覧表の合計欄、の4か所に書かれ、それらが一致するかを人が確認します。4支所合計では単純計算で4倍規模になります。
書類の物量イメージ(実例)
越谷蒲生団地(岩-47)の場合
2棟+集会所、25戸規模の比較的小さい住宅で、点検結果報告書が24ページ、要修繕等一覧が5ページ。これが3部です。272住宅分を想像すると物量の見当がつきます。
この1住宅の不良箇所
27件(非常警報ベル不鳴動1、消火器の標識劣化24、誘導灯 本体不良1・予備電池1)。すべて「6/16公社連絡済」、修理区分は全件公社負担。
全体の不良発生率(大宮・岩槻)
資料07の提出用一覧170行のうち、設備判定が「×(不良)」となったセルは71件。1住宅あたり平均0.4件です。ただし1件の×の裏に、上記のような複数の不良箇所が存在します。
10資料10点ガイド
お預かりした資料それぞれの位置づけです。「何を調べたいときにどれを開くか」の索引としてお使いください。
| No | ファイル | 種別 | 中身と使いどころ |
|---|---|---|---|
| 01 | 県営川口神根ほか271住宅 消防・電気設備等機器点検実務研修ほか業務仕様書 | 仕様書 PDF 4p | この業務の契約上の定義。補助業務の内容(マニュアル作成/説明会開催/報告書の取りまとめ・確認/不備一覧表の作成/法改正対応)、履行期間(契約日〜R8.9.30)、提出書類、公社の連絡先。スコープを議論するときの一次資料。 |
| 02 | 消防点検報告書等のチェック作業の流れ | 手順書 PDF 1p | 本資料でいちばん重要な1枚。チェック作業の7ステップが具体的に書かれています。業務フロー図を書くときの原典。 |
| 03 | 作業上の注意 | 手順書 PDF 1p | 体制(1支所1名/4人)、事務所の使用制限、提出部数の例外、住宅ごとの個別事情。制約条件の原典。 |
| 04 | 令和8年度 県住 消防・電気設備等保守点検業務マニュアル | マニュアル PDF 136p | 点検業者に配布される公式マニュアル。P3=日程と提出書類一覧、P5=監督員・防火管理者一覧、P7〜23=消防用設備の点検と報告書の作り方、P24〜27=避雷針、P28〜31=絶縁抵抗、P32=提出時の書類・部数一覧、P33=緊急修繕、P37〜69=別紙1-1〜1-4(設備数量の正解データ)、P71〜96=様式類集、P99〜147=資料集(消防署別住宅一覧・住所録・面積表・個人情報保護条例)。 |
| 05 | 消防設備等一覧表 | 台帳 PDF 2p | マニュアル別紙1-1-4(岩槻管内)の抜粋。チェック作業における「正解データ」の実物。住宅ごとに約60種類の設備の個数、製造年、住所が横並びで入っています。借上げ県営住宅(点検対象外)は黄色網掛け。 |
| 06 | R72 消防設備チェック表(抜粋住宅) | 作業台帳 Excel 4シート | チェック担当者が実際に使っている手元台帳。シート=「大規模」「岩槻(2)」「大宮(2)」「連送管耐圧R7」。点検業者名・点検者名・号棟別の設備数量・湿式/乾式・耐圧試験の実施年が、独自レイアウトで管理されています。現状の作業のリアルが最もよく分かる資料。 |
| 07 | R7-2点検結果一覧(田熊) | 作業台帳 Excel 3シート | チェック結果の集約表。「消防設備(提出用)」=別紙3に相当する170行の一覧(大宮89・岩槻81)で、設備ごとに○/×/―と不良内容・公社連絡日を記載。ほかに「絶縁抵抗(別紙9-1)」162行、「避雷針設備等(別紙5)」53行。 |
| 08 | 訂正依頼書 | 不備記録 Excel 5シート | 不備の実データ。R5〜R7年度の5回分(岩槻5-①/6-①/6-2/7-1/7-2)。宛先は株式会社新電気 佐々木様、差出人は埼玉県電業協会・担当 田熊。1件ごとに 点検区分/住宅No./住宅名/号棟/設備・機器名/書類種別/不備内容詳細/対応区分(協会・業者・公社)/措置内容/連絡日/処理完了日/チェック担当/連絡担当 を記録。 |
| 09 | 【岩-47】令和7年度 消防設備等(特殊消防用設備等)点検結果報告書 | 成果物 PDF 24p | 実際に提出された報告書の完成形(越谷蒲生団地)。点検実施責任者が株式会社新電気。表紙→防火対象物一覧→点検結果総括表→点検者一覧表→各設備の点検票、という綴り順の実物が確認できます。 |
| 10 | 【岩-47】令和7年度 消防設備等保守点検 要修繕等一覧 | 成果物 PDF 5p | 同住宅の住宅別一覧表の実物。別紙6(要修繕等一覧・27件)、別紙2-2(非常警報)、別紙2-4(誘導灯)、別紙2-6(消火器・25本)、別紙7(不良箇所一覧)。OCR・帳票設計を検討するときの入力サンプルとして最適です。 |
11システム化の勘所(仮説)
ここから先は資料の記述からの推論です。確定情報ではなく、次回打ち合わせでの議論のたたき台としてお読みください。
新電気様がこの業務のどの立場でシステム化を検討されているかが、資料からは確定できていません(確認事項A)。以下は「報告書のチェック業務を効率化する」という前提での整理です。前提が変われば優先順位も変わります。
効きそうな順に3段階
第1段階 正解データの一元化
現在、設備数量の「正解」はマニュアルの紙(別紙1-1)とExcelチェック表に二重管理されています。まずここを一つのデータベースにまとめるだけで、突合の起点が固定されます。
住宅/号棟/設備種別/数量/製造年/湿式乾式/耐圧試験実施年 を持つマスタ。年度をまたいだ差分管理(新築・設備更新・借上げ住宅の増減)ができることが要件になります。
第2段階 照合の自動化
報告書側の数量をデータ化できれば、マスタとの差分を自動で一覧化できます。不備の最大類型である「未記入」「数量不一致」「未提出」「合計欄の誤り」は、この段階でほぼ機械的に検出できます(デモ③がそのイメージです)。
論点は報告書側をどうデータ化するかです。紙をOCRで読むのか、点検業者に入力してもらう仕組みにするのか。ここが設計上の最大の分岐点になります。
第3段階 訂正依頼〜差し替えの管理
検出した不備から訂正依頼書を自動生成し、送付日・期限・処理完了日・担当を追跡します。現在Excelで管理されている項目(対応区分/措置内容/連絡日/処理完了日/チェック担当/連絡担当)は、そのままステータス管理の項目になります。
「訂正依頼が遅れるとその後の差し替え作業等が遅れる」という記述があるとおり、期限管理そのものが業務のボトルネックです。
設計上、先に決めるべき論点
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 報告書の入力方法 | OCR方式(点検業者の運用を変えずに済むが精度と手書き対応が課題)か、入力フォーム方式(精度は高いが点検業者13社以上の運用変更が必要)か。両者のハイブリッドも含めて検討が必要です。実物の報告書は手書き記入が多く(資料09・10)、OCRの難易度は低くありません。 |
| 提出物が紙である制約 | 消防署への提出は消防法の様式に基づく紙の正本です。公社・消防署への提出物そのものを電子化できるかは、公社側の判断事項になります。当面は「チェック工程だけを電子化し、最終成果物は紙のまま」という設計が現実的と考えられます。 |
| 資格の有効期限管理 | 点検者一覧表の資格情報(消防設備士の類別・交付日・講習受講年月、消防設備点検資格者の有効期限)は、ルールが明確なため自動判定に最も向く領域です。過去に実際の指摘も出ています。小さく始めるならここが候補になります(デモ⑤をご覧ください)。 |
| 写真の管理 | 業務写真は住宅ごと・設備ごと・点検場所ごとに整理し、黒板に業務名・住宅名・設備名・場所・業者名を明記する決まりです。写真の点数・住宅との紐付け・記載事項の確認も現在は目視です。画像認識の適用余地はありますが、優先度は上記より下だと考えます。 |
| 年度サイクルへの適合 | 「マニュアル訂正は1回目の点検報告書提出までの分が次年度マニュアルに反映される」という運用があります。年度切り替え時のマスタ更新フローを設計に織り込む必要があります。 |
12確認事項
資料だけでは判断できず、新電気様にご確認いただきたい点を優先度順に整理しました。特にAグループは、これが決まらないと提案の方向性が決まりません。
資料上、新電気様は①点検業者(資料09の点検実施責任者)と②チェック作業を行う側(資料02・03・06・07を保有)の両方の顔を持っています。とくに資料03の「電業事務所使用について」「消防のチェック作業は1支所一人担当のため4人で作業することになります」という記述は、電業協会の事務所を使って検査作業を行う外部要員の視点で書かれています。
ここが最重要です。点検業者としての自社業務の効率化なのか、協会から受託しているチェック業務の効率化なのか、あるいは両方か。目的が変われば作るものが変わります。
5シートすべてが「株式会社新電気 ご担当者 佐々木様」宛、差出人「(一社)埼玉県電業協会 担当 田熊」です。しかし記載された不備は岩槻管内の多数の住宅にまたがり、三進電気・藤岡防災設備など他社が点検した住宅の不備も含まれているように見えます。この訂正依頼書は誰が誰に出したものか、また新電気様が受け取る側なのか作る側なのかを確認させてください。
資料07のファイル名も「(田熊)」となっており、田熊様がチェック作業の実務担当者と推測されます。キーパーソンの所属と役割が分かると、ヒアリング先と業務フロー図の主語が確定します。
既存の「全社AI活用伴走支援」の一環としての新しいテーマなのか、それとは独立した個別案件なのかによって、提案の組み立て方が変わります。
資料01の仕様書は補助業務の対象を「第1回目点検結果報告書」に限定し、履行期間も令和8年9月30日までとしています。しかし資料08には第2回分(3月期限)の訂正依頼書が実在します。別契約なのか、慣行で対応しているのかを確認したいところです。システムの利用時期の設計に影響します。
資料04のマニュアルは令和8年度版が完成しており、仕様書上「マニュアルの作成・提出・承諾」は補助業務の第一項目です。つまりR8年度分はすでに動いていると読めますが、契約主体を確認させてください。
資料06・07・08はいずれも岩槻・大宮の2支所分のデータです(資料07の一覧も大宮89行・岩槻81行)。川越・熊谷の資料がないのは、担当外だからか、単に共有されていないだけかを確認したいです。対象範囲が2支所か4支所かで、想定する規模が2倍変わります。
マニュアルP33に、点検業者は担当住宅の緊急修繕対応を行い、同一公社所管の他工区業者とバックアップネットワークを構築する義務がある旨が記載されています。点検業務とは別の業務フローであり、こちらも課題があるならスコープに含める検討ができます。
「1支所一人担当・4人体制」「9月に集中」までは分かりましたが、1住宅あたりの所要時間、1日の処理住宅数、残業・持ち帰りの実態が分かると、効果の試算ができます。資料03に「提出書類を自宅へ搬出する」とあるため、事務所内だけで完結していない可能性があります。
シート構成(大規模/岩槻(2)/大宮(2)/連送管耐圧R7)とレイアウトが独自で、作成者の頭の中の構造がそのままExcelになっている状態です。この台帳が誰の手で毎年どう更新されているかが、マスタ設計の出発点になります。
マニュアルP35に「データ提供:埼玉県住宅供給公社」と記載があります。公社側にマスタデータの原本がある可能性が高く、それをExcel等で受け取れるなら、システム化の初期コストが大きく下がります。逆に紙のみなら、まず入力工程が必要になります。
資料09・10を見る限り数値・氏名は手書きです。手書きの比率が高いほどOCR方式のハードルが上がるため、入力方式を決める前提条件になります。点検業者13社以上の実態を把握したいです。
資料03に「訂正依頼は電業にメールを送り電業からファックスを送信してもらう」とあります。協会を経由するFAX送信という2段階が実態のようです。点検業者側がメール・Web受領に対応できるかは、システム設計の自由度に直結します。
資料09(令和7年度報告書)に記載された新電気様の点検者について、マニュアルP16の要件と突き合わせたところ、令和8年度は要件を満たさなくなる可能性のある記載が確認できました。実際に更新済みであれば問題ありませんが、書類上の確認をおすすめします。下のデモで計算根拠を確かめられます。
※ 判定ルール:マニュアルP16「講習を受けた日以後における最初の4月1日から5年以内」。R8年度の第1回点検開始日(2026年6月1日)時点で有効かどうかを判定しています。
| 点検者 | 資格 | 資料09の記載 | R8年度の扱い |
|---|---|---|---|
| 立原 誠一 氏 | 消防設備点検資格者 第1種・第2種 | 有効期限 R8年3月31日 | R8年度(6月点検)時点で期限切れ |
| 大橋 利春 氏 | 消防設備士 甲種4類 | 講習受講 R3年1月 | 「R3.4以降の受講日」の要件を満たさない |
| 大橋 利春 氏 | 消防設備士 乙種6類 | 講習受講 R4年11月 | 要件を満たす |
| 立原 誠一 氏 | 消防設備士 甲種4類・乙種6類 | 講習受講 R4年11月 | 要件を満たす |
※ 過去にも「細谷氏 第1種の有効期限が R5.3.31です。確認願います」という同種の指摘が訂正依頼書に記録されています。人が毎年目視で確認している領域です。
上記のような期限管理はルールが明確で自動判定に向く領域です。もし現在Excelや紙で管理されているなら、小さく始める最初のテーマとして適しています。
①点検の現場作業(記録の取り方)、②報告書の作成、③報告書のチェック、④訂正依頼の管理、⑤公社への提出物の整理・発送。資料の内容から見て③④が本丸と考えていますが、優先順位のご意向を伺いたいです。
チェック業務の効率化は、性質上協会や公社を巻き込んだほうが効果が大きくなります。新電気様の社内ツールとして作るのか、将来的に協会・公社へ展開する構想があるのかで、設計思想が変わります。
県内の点検業者13社以上が同じ様式で報告書を作成しています。報告書作成支援ツールとしては横展開の余地がある領域です。ただし新電気様にとって競合支援になる面もあるため、ご意向の確認が必要です。
県営住宅以外(市営住宅、UR、民間マンション等)でも同種の消防点検業務を受注されているなら、共通の仕組みとして設計することで投資対効果が上がります。
既存案件では営業部8項目・工事部11項目・総務部4項目の課題を整理していますが、今回の消防点検業務はそのリストに含まれていません。新しいテーマとして追加するのか、独立した案件として扱うのかを決める必要があります。
次回打ち合わせの進め方(提案)
1. A-1〜A-4を最初に確認し、新電気様の立場と今回のご相談の狙いを確定させる(15分)
2. デモ②(チェック作業7ステップ)を画面に出し、各ステップの所要時間と辛さを一緒に埋めていく(30分)
3. 資料06・07のExcelを実際に開いていただき、どう作り、どう使っているかを操作しながら見せていただく(20分)
4. デモ⑤で資格期限の件をお見せし、小さく始める最初のテーマ候補としてご相談する(10分)
5. B-1〜B-3で対象範囲と契約構造を確認し、スコープを固める(15分)